加藤孝一
1.はじめに
2.凄惨な災害現場活動と救援者の「こころの傷」
3.心傷性災害ストレス(CIS)とは何か
4.心傷性ストレスの徴候と症状
5.ストレス反応を放置した場合の問題点
6.CISに対する対応策等について
7.解隊サービス(デモビリゼーション)等について
8.ストレス緩和の心理的応急手当法(デフュージング)
9.デフュージング(災害体験を整理し受容するグループミーティング)
10.まとめ
11.別表2 心的外傷後ストレス障害(PTSD)の診断基準
12.別表3  CISDチームの機能と役割
13.別表4  デブリーフィングの進め方


1.はじめに
平成7年1月17日の阪神・淡路大震災とその直後に発生した東京地下鉄サリン災害では、被災者の「心の傷」が問題となった。
 災害の精神医学的影響に関する研究は、欧米や発展途上国で精力的に行なわれてきたが日本では未開発の分野であり、更に被災者の「心の傷」以上に消防署員等の「心傷性災害ストレス」については全く知られていない現状である。

 私は、消防署員としての勤務の傍ら社会人大学院でカウンセリングを専攻し臨床心理学等各種の心理学や心理療法、心身医学等を学ぶ立場から、被災者や災害時の救援者役割を担う消防署員等のストレスとストレス対処法について関心を持ってきた。その結果、災害時の救援者役割に起因する心傷性ストレス(Critical incident stress:以下CISという)についての研究が日本では全く行なわれておらず、一方、米国ではCISの実証的研究が行なわれストレスマネジメントの観点から多くの消防機関が積極的にCISに対応している事実を知り、日米の落差の大きさを実感した。

 阪神・淡路大地震で特徴的なことは、地元の消防職・団員は被災者としてのストレスと救援者としての役割上のストレス(CIS)を二重にうけたことである。しかも、CISについての認識が全く無い日本では、職員個人も組織全体としてもこの種の問題に関心が薄く、有効なストレス対処法が取られないままに放置される可能性も否定できない。このような状況を看過するのは危険なことであり、むしろこの機会に日本の消防全体で関心を持ってCIS等に対する理解を深め、今後のストレスマネジメントに反映すべきであろう。

 平成7年5月7日付けの読売新聞は「阪神大震災 救援者の心の救援が今、必要だ」と題する社説を掲げて、被災者だけでなく消防等の救援側にも組織的な心身両面のケアーが必要であると主張している。社説は、被災者が受けた心の傷が、心的外傷後ストレス障害(Post-traumatic stress disorder:以下PTSDという)として問題となったが、消防等の救援者も例外では無く、その上で、ストレス軽減のために組織の内部報告書として救援体験を書き続けることや、くつろいだ雰囲気で全員が参加して語り合う報告会(デブリーフィング 以下CISDという)を専門家の指導で定期的に開くことを提言している。
2.凄惨な災害現場活動と救援者の「心の傷」
「ストレス」という概念は、生体の恒常性が乱れる出来事の総括的な呼称であり(Selye,1936)その概念は健康な人々にも適応され、現在ではラザルスの研究によって測定困難な心理的要因もストレス源とされるようになった。

 一方、「災害」は、個人や社会の対応能力を超えた不可抗力的な出来事や状況、更に少なくとも一時的には、個人や社会の機能に重大な崩壊状態をもたらすものと定義され、戦争と共にトラウマティック・イベント(Traumatic event:心的外傷を引き起こす出来事)と見なされている。

 災害の中には、大量死、大破壊、凄惨な場面での活動、同僚の殉職や子供の死亡等、通常の災害ストレスを超えて個人のストレス耐性(抵抗力)を上回るような心傷性過重負担を伴う災害がある。このような心傷性災害ストレス状況下で、救援者が心身の限界を超えて休みなく働き、かえって混乱や非効果的な事態を招くことがある。これは「災害対応症候群」と呼ばれる行動で、「燃え尽き現象」(ストレスによる精神・神経の消耗)に発展する恐れがある。

 阪神・淡路大震災という消防の戦場で戦った消防職員達の声は悲痛である。「水のでないホースを持った消防ほど情けないものはない、本当に辛かった」、「生き埋めになったおばあちゃんを救出しようとしたが、火の手が迫って助け出せなかった。今でもおばあちゃんの顔が目に浮かぶ」、「地震の時は当務中で、自分の家族の安否も確認できないまま消火や救援活動に追いまくられた。消防職員としての使命感と家族の安否が確認できない不安から、一時も心が休まらなかった」・・・・これらはCISを引き起こす高ストレス状況であり、多くの消防職員等が何らかの心的外傷を受けたであろうことは容易に推測できる。職員の中には、思い出したくない凄惨な場面を何かのはずみに想起するフラッシュバック現象や、睡眠障害、悪夢、慢性の疲労感、イライラ、記憶障害、集中力の減退などを震災直後からしばらくの間体験した人も多いのではないか。
3.心傷性災害ストレス(CIS)とは何か
CISは、日本語としての定訳がなく災害ストレス、特異災害ストレス、惨事ストレス、と色々に表現されているが、私個人としては心傷性災害ストレスと翻訳したが、その内容を心理学的に説明しているような気がしている。

本稿では、日本語にこだわらず「CIS」として表現を統一したい。

CISは、消防職員等の緊急業務従事者特有の職業ストレスとして米国のメリーランド大学のジェフリー・ミッチェル博士(Jeffrey T.Mitchell,ph.D)等によって研究が進められた比較的新しいストレス概念である。

ベトナム戦争帰還兵の治療研究から、米国でPTSDという診断名が使用されるようになったのは1980年であり、この年に初めて精神障害診断マニュアルである米国精神医学会のDSM-III(診断基準第3版)にPTSDが個別の病気として登場したが、CISも同じころに登場してきた概念である。

ミッチェル博士によればCISとは、「緊急業務従事者に精神的に異常な反応を引き起こさせ、現場において又はそれ以降、当人に能力的な面に関して影響を与える可能性のあるあらゆる状況」と定義している。

CISの定義は研究者によっても幅があり一様ではないが、シアトル市消防局やハワイの米空軍ヒッカム基地のCISDチーム(デブリーフィング等の心理的サポートを行なうチーム)綱領等から、米軍の消防や軍隊ではミッチェル博士の考え方を基本にしていることが伺える。CISを引き起こすストレス要因としては次のような状況が挙げられる。なお、ここでは紙幅の関係で発生機序(ストレスが発生する理由)については割愛する。

(1)同僚が負傷したり殉職したとき
 同僚が殉職あるいは負傷した場合にCISDを実施するのは、米国の消防や軍隊では一般的であり、CISDチームの役割として規定化されている。
(2)困難な状況下で、しかも自分自身も死の恐怖を感じながら活動する時
(3)要救助者が自分の息子や娘と年令的に近い子供で、その子供が死亡したとき
(4)被災者が自分の知っている人であるとき
(5)多数の死傷者が発生した場合や凄惨な現場で活動を行なうとき
(6)重症の人を救出する時や救援した人が、その後に死亡したとき
(7)何らかの理由で救援者としての任務を十分に遂行出来なかったとき
(8)迅速な状況判断を次々にしなくてはならないとき
(9)異常な環境下でのあらゆる出来事及び苦痛を与える光景、音、又は臭気


 また消防等の救援者にストレス反応が表れるのは自然なことであり、これを無視したり軽視すべきではないとミッチェル博士は指摘している。異常な事態での異常な反応は当たり前のことであり、救援者役割を担う消防職員だからといって、これを無視するのは単なる「強がり」に過ぎないとの見解である。
4.心傷性災害ストレスの徴候と症状
(1)身体的には、めまいや吐き気、筋肉の振え、下痢、呼吸困難、寒気、冷や汗、頭痛、入眠及び睡眠  障害、悪夢、疲労、抵抗力の減退などが挙げられる。

(2)認知・行動的特徴としては、集中力が無くなり、思考がまとまらず、記憶力も低下する。心理的な混 乱状態が続くために、なかなか決断が出来ず重要な問題に直面すると対応出来なくなる。また、間違 いや事故が起きやすくなる。
  過度に活動的になったり、またストレス要因となった災害を想起させる場所や物事を回避し、悲惨な 場面が繰り返し想起されるフラッシュバックや、更にはストレスから飲酒や喫煙の量が増加することも  ある。

(3)感情的には不安や恐れが強くなり、些細なことにもおびえ易く、欲求不満からイライラしたり怒りっぽ  く攻撃的になる。あるいは悲嘆、無気力、罪悪感、更には抑うつ、自殺企図、引きこもり等の特徴が   見られる。
  これらのストレス反応は個人差があり、ある人に発現した症状でも他の人には発現しなかったり、ま  た現場で急性のストレス反応あるいは病理的な急性ストレス反応あるいは病理的な急性ストレス障  害(ASD)になり、感情麻痺などの症状が現れることもある。
5.ストレス反応を放置した場合の問題点
 災害直後の精神の変調は、精神的な弱さを意味するものではなく、正常な人間が異常な状況に対応しようとする一種の防御反応であり、必ず解消される性質のものである。しかし、早期に必要なストレス対処法を取らなければ、家庭や職場での問題を大きくし時には病理的な段階へと進行することがある。

 家庭では、妻や子供に辛く当たる等、人間関係が悪化し最悪の場合には家庭不和や離婚に発展することがある。また職場では、信頼関係が崩れ職場規律が乱れたり業務能率の低下、事故の多発、更には職務意欲の減退や喪失から退職することもあり得る。放置された場合には慢性ストレス化し、そのストレスによって心臓病、冠動脈疾患、糖尿病、消化管の潰瘍、頭痛、癌、風邪等の身体疾患を併発することがあると言われている。

一方、PTSDは普通の人間の経験を超えた大震災等の異常事態によって生じる様々な状況であり、衝撃的な場面の想起(フラッシュバック)や悪夢、引きこもり等、心傷性災害ストレス反応と共通した症状が見られる。しかし、PTSDの場合は、その期間も長く社会適応が困難になる程の強度で発現する等の差異が見られる。調査によればPTSDは災害後24時間で約85%の人々が経験するが6ヶ月後に20%、1年後に5%と時間とともに基本的には減少する。
6.CISに対する対応策等について
 米国の消防機関等では、ストレス・マネジメント(ストレス反応の減少や、ストレス反応の生起に対する抵抗力の増加をを目的とした教育や、精神的な危機介入)の一環として、精神科医やカウンセラー等チーム等を組織している。特に強調されているのは次のような点である。

(1)CISは人間として正常な反応であり、精神的な弱さを示すものではない。
(2)CISへの対応と十分な職員教育はトップマネジメントである。
(3)ストレス反応に対して職場内でオープンに話し合える雰囲気を作る。
(4)社会の他の分野の友人達との交流や幅広い趣味、レクリエーション活動等。
(5)規則正しい運動や健康な食生活の維持、酒等の嗜好品に頼らない生活。


 多数の死者が発生した凄惨な現場活動等、CISが予想される場合には専門家の指導を受けてタイムリーなストレス軽減・発散法を組織的に行なうことが必要であり、時系列的には、別表3のようなストレス対処技法が標準てきである。
 またストレス・レベルに応じた対処法が考慮され、ストレスレベルが低い場合は、デモビリゼーション、デヒュージング等で十分な場合もあるが、ストレスレベルが高くなるにつれてデブリーフィング(CISD)、カウンセリング、サイコセラピー(心理療法)や認知行動療法、薬物療法という具合に順次その症状や病態に応じた個別対処療法が必要となってくる。

                          別表3【CISDチームの機能と役割】参照
7.解隊サービス(デモビリゼーション)等について
 心傷性災害ストレスが予想される災害現場では、解隊サービス(デモビリゼーション:Demobilization)を実施する。これは部隊を指定して、一時的にでも災害活動の最前線を離れさせ、リラックスできる場所を確保して休息を与えて気分転換を図るものである。これは、兵士の戦闘ストレスを軽減させるためにイスラエル軍で効果的に活用されている技法であり、消防の場合には指定された消防部隊が飲料水や多少のスナック類をつまんだり、災害に起因してどのようなストレス反応が予想されるか、またどうすればストレスを軽減できるかの指導を受ける場である。デモビリゼーションは長くても30分程度でありローテーションを決めて実施し、参加隊員の感情発散や恐怖感の減少を図る。

 また、災害活動をする職員が、現場活動中に個々のレベルでストレスを軽減する方法としては次のような方法が推奨されている。

(1)時々、意識的に深呼吸をして心を落ち着ける。
(2)活動しながら自分の感情を表現できるパートナーを作り相互に声をかける。
(3)被災者の居ないところでは同僚と務めてユーモアーのある会話を心掛ける。
(4)自分で自分自身の活動を褒める。
(5)チームワークを大切にし、チームの一員としての任務に気持ちを集中する。
8.ストレス緩和の心理的応急手当法(デフュージング)
 デフュージング(Defusing)は、CISを体験した消防職員が通常の生活パターンに戻る前の心のケアーとして行なわれる心理的応急手当である。

 職員が現場を離れる前や災害活動終了後8時間以内の間に行なうもので、カウンセリング等の専門知識を有する者がリーダーとなり、最も深刻にCISを体験したと思われる職員を対象に、その職員のストレス反応に応じた情報や助言を与える。このセッションでは、ある程度は仲間や上司への抵抗や批判を許容するとともに具体的なストレス軽減法等を指導し、更に強度のストレス障害を示す者をチェックし、必要があれば個別のカウンセリング等を指導する。

 時間は30分から45分程度で、参加者が充分に発言する機会は少ないが効果的に実施されれば、以後のストレス反応を緩和し時にはCISD(デブリーフィング)が不要になることがある。
9.デブリーフィング(災害体験を整理し受容するグループミーティング)
 デブリーフィング(CIS−Debriefing)は日本語になりにくい言葉である。

災害発生前の日常的なストレス教育がブリーフィング(Briefing)であるとすれば、デブリーフィングは通常、災害後24時間から72時間以内に行なう本格的な事後の心理的ストレス緩和・発散の報告会である。

軍隊などの帰還報告を意味する「デブリーフィング(CISD)」の言葉が使用されているのは、精神科や心理学的なラベル(呼称)を意識的に避けて、参加者が患者等ではなく正常な人々であることを強調するためである。

(1)専門家が、ファシリティター(推進役)を勤め、消防職員でカウンセリング研修を受けたものがピア・デブリーファー(仲間のデブリーファー)としてCISを体験した同僚の心理的サポートと、ファシリティターを補佐する。

(2)CISDで話された内容は秘密厳守とされ、メモ等の記録を一切取らない。そうすることで自分達が体験してきた恐怖、ストレス等のあらゆる感情を回顧し心を解放して気持ちを整理し、自分なりに受容できる意味付けをする。

(3)会場は参加者がリラックスできるような場所が選ばれ、参加者はデブリーフィングに集中できるよう勤務免除がなされる。

(4)時間は2時間から最高4時間以内で、グループの人数は全員が時間内に充分話せる程度の人数に限定し、参加者の孤立感を和らげる。

(5)カウンセリング心理学では「グループが人を癒す」と言われている。ストレス反応が自分だけのものではなく、グループ内の他の人々も共通の感情や心身の不調を感じていることを理解し共感と安心感が生まれる。
                     別表4【デブリーフィングの進め方」参照
10.まとめ
 前述のデフュージング、デブリーフィングは専門家や組織的な取り組みがなければ直ちには実施困難である。しかも、日本では専門家が皆無に等しく、私自身も米国人カウンセラーからCISDの教育訓練を受けたくらいである。

 米国には国際CIS協会等があり普及啓蒙や実践活動を行なっているが、日本では断定的な情報しか入手できず、そのため本稿も全体像をまとめるのが困難であった。今後は各消防機関の組織的な関心と取り組みに是非、期待したい。

 災害活動中や、その直後の事後処理で忙殺されるときに時間を割いて、CISD等を行なうためには意識改革、発想の転換が必要であり、災害心理学的観点から判断と助言のできる指導者の育成や、職員教育と実際的なサポートシステム作りが必要である。米国では特別の教育訓練を受けた消防職員によるCISDチームが組織されており、1990年3月25日にニューヨークの社交クラブで発生し87名の大量焼死者がでた火災では、ニューヨーク市消防局のカウンセリング部隊が出場してデフュージング等の心理的サポートを行なっている。

 また、組織的な対応ができるまでの間、個人レベルでも出来るストレス対処法を普及することが大事である。例えば「トークスルー」という、家族や友人知人、職場の仲間との会話によるストレス緩和法がある。CISを体験した者が自分の体験や感情を話し、聴き手は共感的、受容的に受け止めてやる。聴き手が「聴き上手」であるためには、多少の訓練や心構えが出来ていなければならないが、話し手は、本音を気兼ねなく話せる相手を見つけて感情を吐露することを考えればよい。これは、抑圧された感情を表現することによるカタルシス(浄化)効果、つまり感情の洗い流し作用によるストレスの緩和法である。

 また組織のトップが職員の功労を顕彰することも大変効果的で重要である。その他にも一般的に知られているストレス軽減法の活用も有効である。

 しかし感情麻痺等、強度のストレス障害から、このようなストレス緩和が困難な者やCISDに参加できない人には、カウンセリングや心理療法、精神科医等による専門的治療を早期に行なうことが必要である。
 心傷性災害ストレスの研究と実践において日本は米国にはるかに立ち遅れている。しかし、その米国でさえ十分に認識が高まっているわけではなく消防職員の中にも理解不足や誤解している者も多いという。

 精神的な問題は目に見えないだけに、つい見逃しがちであり更に無知・無関心が輪をかけて事態を悪化させることも容易に起こりえる。

 日本の消防が、この種の問題にこぞって重大な関心を寄せ「組織の一人ひとりの人間を大切にする」消防機関としての姿勢を是非発揮して欲しいものである。消防職員が常に明るく溌刺として、精神的にも充実し高い職務意識と遂行能力を維持できるよう配慮することは、消防の管理者のみならず、消防職員すべての責任であり、心掛けなければいけないことであろう。
 阪神・淡路大震災や地下鉄サリン災害の教訓を無駄にしないためにも!


別表2
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の診断基準
-----鑑別診断:不安気分を伴う適応障害-----------
「DIAGNOSTIC AND STATISTICAL MANUAL」
            By American Psychiatric Association
(米国精神医学会の精神障害診断・統計マニュアルから)
A.ほとんど誰にでもはっきりとした苦悩を引き起こすような明白なストレスの存在。

B.以下のうち少なくとも1項目に示されたような心的外傷の再体験。
(1)反射的かつ意識的に侵入的な事件の想起
(2)事件の反復的な夢
(3)あたかも、その外傷性事件が再び起きたかのような突然の行動や感情で、環境あるいは観念上の刺激とその連合によるもの・・・「フラッシュバック」

C.外界に対する反応の麻痺あるいはかかわりあいの減少で、心的外傷後しばらくして始まり、以下のうち少なくとも1項目によって示されるもの。
(1)一つあるいはそれ以上の重要な活動に対する興味の著しい減退
(2)他の人から孤立している、あるいは疎遠になったという感覚
(3)収縮した感情

D.心的外傷前には存在しなかった症状で、以下のうち少なくとも2項目。
(1)過敏あるいは過度の驚愕反応
(2)睡眠障害
(3)他の人が死亡したのに自分が生き残ったことに関する罪責感、あるいは生き残るためにとった行動に対する罪責感
(4)記憶の減退あるいは集中困難
(5)外傷性事件を想起させるような活動の忌避
(6)外傷性事件を象徴する、ないし事件に類似する出来事に身をさらすことによる症状の増悪
(注記)PTSDの主症状  (1)侵入的想起、反復的想起                                            (2)覚醒亢進状態                                                  (3)回避、感覚麻痺

別表3
CISDチームの機能と役割
(ジェフリー・ミッチェル博士のモデル
時系列 主な実施内容
災害発生前 1.心理教育・・・ストレスや精神衛生に関する教育
  (管理職層や一般職員、家族が対象) 

  ・ストレス要因とストレスの対処法等の教育         
2.ストレスマネジメントの実際場面での活用の促進
3.緊急業務従事者のための研修                 (ピア・カウンセラー等の養成を含む)
災害活動中  *又はその直後 1.解隊サービス(Demobilization)
 (1)部隊を指定しての休息とストレス発散
 (2)緊急ストレス障害(ASD)のチェック
2.ストレス発散の心理的応急手当法(Defusing)
 (1)通常の生活にもどるためのストレス軽減・発散
 (2)デブリーフィングの前段階として実施する
災害終息後 1.活動体験等を語り気持ちを整理する報告会:CISD
  (Critical incident stress debriefing)
 (1)凄惨な災害現場に参加した全員が対象
 (2)災害活動に詳しい精神衛生の専門家が指導
2.職員個々の状況に応じた追跡指導(Follow-up)
 (1)カウンセリングや休養、気分転換等の指導
 (2)専門医の治療を勧める(PTSD等)
CISDチームは、カウンセリング等の研修を受けた消防職員等によって組織される

別表4
デブリーフィングの進め方
(ミッチェッル博士のモデル)
6段階の区分 実施内容
導入段階 (1)ファシリティーターが参加者の氏名と役割を紹介
(2)CISDの必要性と目的、約束事を説明する
 ・誰が参加し何を話したかはすべて秘密とする
 ・話したくないときは沈黙してもよい/人の為ではなく自分の為にのみ話  す/個人の行動や組織の戦略を批判しないし、その種の議論もしない
事実を理解する段階 (1)ファシリティーター(推進者)が質問をする
 ・名前、階級、災害現場での役割、行動の内容、見たもの、聞いたもの
 臭い、話したこと、一緒にいた人、自分が居た場所、その他
(2)参加者が交互に話して事実を浮き彫りにする
感情の段階 (1)参加者に順に、最初に何を考えたか、どのように感じたかを質問する
(2)今、どのような考えや感情を持っているかを聞く。以前にもそのようなことがあったかどうか
(3)参加者は恐怖、不安、関心事、罪悪感、欲求不満、怒り、葛藤等の   様々な考えや感情を述べるので、どんなものでも十分聞き込むこと
症状の理解の段階 (1)災害活動のときにどんな異常なことを体験し、今どのような反応や変化が自分自身や家庭、職場で起きているか質問する
(2)参加者は異常な災害活動の結果としての、自分自身の心傷性災害ストレス反応を話し、参加者で意見交換を行なう
教育の段階 (1)ファシリティーターは各参加者に、心傷性災害ストレス反応が、凄惨な現場活動等を行なった消防職員等にとって自然で正常な反応であることを繰り返し伝える
復習とまとめの段階 (1)ファシリティーターは各参加者からの質問に答えるとともに、今後、参加者がどのようにして自分自身のストレスに対処すべきかの方法を伝える
(2)参加者は必要があれば、今後も継続的に精神的な援助が受けられるとを伝える
(3)デブリーフィングについての飼料等を配布する
(4)参加してくれた事と、自由に意見を述べ合ってもらえた事などを感謝 する
ファシリティーターは緊急活動を十分理解している精神衛生の専門家が務めること